動物取扱責任者の要件と研修

ペットシッターを開業するとき、最初に確かめるのは、自分が動物取扱責任者になれるかどうかです。民間の資格だけでは足りない場合があります。

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獣医師・愛玩動物看護師以外の人は、「実務経験(又は飼養経験)」と「学校の卒業又は試験の合格」の両方が必要です。

このページの要点

  • 第一種動物取扱業者は、事業所ごとに動物取扱責任者を選任する(動物愛護管理法22条1項)。
  • 要件は、獣医師・愛玩動物看護師の免許、又は半年以上の実務経験(1年以上の飼養経験)に加えて、1年以上の教育機関の卒業か団体の試験による証明(同法施行規則9条)。
  • 選任したすべての動物取扱責任者に、都道府県知事が行う研修を受けさせる(同法22条3項)。
  • 民間の「ペットシッター資格」が教育機関・試験の要件に当たるかは個別の確認が必要。

事業所ごとに「動物取扱責任者」を置く

第一種動物取扱業者は、事業所ごとに、業務を適正に行うために十分な技術的能力と専門的な知識経験を持つ人の中から、動物取扱責任者を選任しなければなりません(動物愛護管理法22条1項)。動物取扱責任者の氏名は、登録の申請事項であり(同法10条2項3号)、標識にも記載されます(訪問のときに着ける識別章には記載しません。同法施行規則7条)。一人で開業するペットシッターは、自分が動物取扱責任者を兼ねることが多いので、開業の前に自分が要件を満たすかを確認することが、最初の一歩になります。

動物取扱責任者になれる人

動物取扱責任者の要件は、施行規則で定められています(同法施行規則9条)。次のいずれかに当たり、かつ、事業所の他の職員に対して、研修で得た知識と技術を指導する能力があることが必要です。

動物取扱責任者の要件(施行規則9条1号)
区分要件
獣医師獣医師の免許を持っていること
愛玩動物看護師愛玩動物看護師の免許を持っていること
実務経験+教育機関営もうとする種別ごとに施行規則の別表で定める種別に係る半年以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る)、又は取り扱う動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1年以上の飼養の経験があり、かつ、その種別に係る知識と技術を1年以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること
実務経験+試験上と同じ実務経験又は飼養の経験があり、かつ、公平性と専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、その種別に係る知識と技術を習得していることの証明を得ていること

獣医師・愛玩動物看護師以外の人は、「実務経験(又は飼養の経験)」と「学校の卒業又は試験の合格」の両方が必要になる、という点が大切です。民間の「ペットシッター資格」として販売されている講座や検定が、ここでいう教育機関の卒業や客観的な試験に当たるかどうかは、講座ごと・自治体ごとの判断になります。受講の前に、事業所の所在地の窓口で、その資格が要件に使えるかを確認しておくと、時間と費用を無駄にしません。

自分が動物取扱責任者になれるかの確認

獣医師又は愛玩動物看護師の免許を持っていますか?持っていれば、学校の卒業や試験の合格がなくても要件を満たします。
ペットの世話の仕事に、常勤で半年以上従事した経験がありますか?その経験が、営もうとする種別(保管)に係るものとして認められるかを確認します。ない場合は、1年以上の飼養の経験が実務経験と同等と認められるかを確認します。
1年以上の教育機関を卒業しているか、団体の試験に合格していますか?上の経験とあわせて、要件を満たすかを窓口で確認します。どちらもない場合は、学校や試験の準備から始めます。

要件を満たす人が自分以外にいる場合は、その人を動物取扱責任者に選任して開業することもできます。その人は、その事業所に専属の常勤の職員である必要があります(同法施行規則3条1項4号)。その場合も、責任者は事業所ごとに置く必要があり、実際に業務を指導できる立場にあることが前提です。

なれない人(欠格事由)

動物取扱責任者は、登録の欠格事由のうち一定のもの(登録を取り消されてから5年を経過しない人、動物愛護管理法などに違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない人など)に当たる人であってはなりません(同法22条2項)。スタッフを動物取扱責任者に選任する場合は、選任のときに欠格事由に当たらないことを確認し、その確認の方法(誓約書の提出など)を決めておきます。

動物取扱責任者研修を受けさせる義務

第一種動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、都道府県知事が行う動物取扱責任者研修を受けさせなければなりません(同法22条3項)。研修では、動物の愛護と管理に関する法令(条例を含みます)、飼養施設の管理の方法、動物の管理の方法などを扱います(同法施行規則10条3項)。研修の開催の通知を受けたら、事業者は選任したすべての動物取扱責任者に遅滞なく連絡します(同条2項)。

「ペットシッターの資格」と、法律上の要件の関係

「ペットシッター資格」で検索すると、民間の講座や検定が数多く出てきます。これらの資格を持っていなくても、法律上の要件(動物取扱責任者の要件と登録)を満たせば、ペットシッターとして開業できます。逆に、民間の資格を持っていても、登録を受けなければ営業できません。資格は、知識を身につける手段であり、利用者への信頼の材料にもなりますが、開業の可否を決めるのは、登録と動物取扱責任者の要件です。

ペットシッターの開業に関わる「資格」の整理
項目法律上の位置づけ
第一種動物取扱業の登録業として行うために必須(動物愛護管理法10条)
動物取扱責任者の選任事業所ごとに必須(同法22条)。要件は施行規則9条
獣医師・愛玩動物看護師の免許動物取扱責任者の要件の一つ。医療行為を行える範囲は免許ごとに法律で決まっている
民間のペットシッター資格・検定それだけでは法律上の資格ではない。動物取扱責任者の要件(教育機関・試験)に使えるかは個別に確認

利用規約やホームページで、スタッフの資格を紹介するときは、民間の資格を国家資格と誤認させるような表示は避けます。「当社のスタッフは全員、◯◯の資格を持っています」と書くなら、実態と一致させ、資格の名称と発行団体を正確に示します。

ご相談の場面から:動物取扱責任者についてのご相談

動物病院で受付の仕事を2年していました。動物取扱責任者の実務経験になりますか?

実務経験として認められるかは、営もうとする種別(保管)に係る経験かどうか、常勤で在職していたかどうかで判断されます。受付の業務の中で動物の世話にどの程度関わっていたかによって評価が分かれるので、在職を証明する書類と業務の内容を整理して、窓口に事前に相談することをお勧めします。

スタッフを動物取扱責任者にして、私は経営に専念したいと考えています。

要件を満たすスタッフを選任することはできます。選任したスタッフに研修を受けさせる義務は事業者にあり、そのスタッフが辞めたときは、新しい責任者の選任と変更の届出が必要になります。責任者が一人しかいない場合の交代の備えも考えておきます。

更新と研修を忘れないための仕組み

第一種動物取扱業の登録の更新の申請は、有効期間が満了する日の2か月前から満了する日までの間に行います(動物愛護管理法施行規則4条1項)。更新を受けないまま有効期間が過ぎると登録は効力を失い、その後の営業は無登録営業になり得ます。開業して数年たつと、更新の時期と動物取扱責任者研修の受講を忘れてしまう、というご相談が少なくありません。

見落とされやすいのは、登録の有効期間が、行政の手続だけでなく、事業者が作った書類にも書かれていることです。規約・申込書・特定商取引法に基づく表記・ホームページ・標識・識別章のすべてに、登録番号と有効期間の末日が載っています。更新を受けたら、新しい番号や期間に差し替える必要があります。事務所が書類に登録の有効期間を書き込む際は、登録証の記載と一日単位で突き合わせるよう依頼者に確認をお願いしています。有効期間の末日の書き方が、自治体によって異なる例があるためです。

更新と研修の管理の手順(例)

  1. 有効期間の末日の記録登録証の記載どおりに、末日を予定表に入れる。2か月前の日(更新の申請の開始日)も入れる
  2. 研修の案内の受領動物取扱責任者研修の開催の通知を受けたら、選任したすべての動物取扱責任者に連絡し、受講の日を決める
  3. 更新の申請更新の申請期間に入ったら、申請書を出す。事業の内容に変更があれば、あわせて確認する
  4. 書類の差替え更新後の番号・期間を、規約・申込書・特商法表記・ホームページ・標識・識別章に反映する。同じ日に差し替える
  5. 委託先の確認業務委託のスタッフにも登録を求めている場合は、スタッフの登録の有効期間も年に1回確認する

業務委託のスタッフに登録を持っていることを委託の条件にしている事業者は、スタッフとの契約に、登録の有効期間を確認する時期と、失効したり登録の内容が変わったりしたときに直ちに知らせる義務を書いておきます。スタッフの登録の失効に気づかないまま案件を任せることを防ぐためです(スタッフとの業務委託契約書)。

責任者による「指導」と、業務委託のスタッフ

動物取扱責任者の要件の一つに、研修で得た知識と技術を、事業所の他の職員に指導する能力があることが含まれています(動物愛護管理法施行規則9条)。雇用のスタッフであれば、責任者が手順を教え、守らせることに問題はありません。一方、業務委託のスタッフに、責任者が作業の手順を細かく指導し、研修の受講を義務づけると、遂行の方法への指揮命令や、教育訓練を受ける労働者に近い外形が生まれます。報酬のない研修への参加を求めることは、フリーランス法の禁止行為(不当な経済上の利益の提供の要請)にも当たり得ます。

責任者が関わる場面の分け方(例)
場面雇用のスタッフ業務委託のスタッフ
法令・安全・感染症の知識研修として指導する情報として提供する。受け取ったことを記録する
作業の手順・段取り手順として指導する「どのような状態にするか」を仕様書で示し、方法は任せる
研修・勉強会業務として参加させる参加は任意。欠席を理由に不利に扱わない。参加を求めるなら報酬を払う
新しく委託を始めるとき採用後の研修契約を結ぶ前の「業務説明と実務確認」として、選定の過程で行う(回数の上限を決める)

動物取扱責任者が一人しかいない小さな事業者ほど、この区別があいまいになりがちです。責任者の役割を果たすことと、委託のスタッフの独立性を保つことを両立させるために、どの場面で何をするかを、スタッフとの契約と社内の手順書の両方に書いておきます(スタッフとの業務委託契約書)。

よくあるご質問

動物取扱責任者になるには、どんな資格が必要ですか?

獣医師又は愛玩動物看護師の免許を持っているか、営もうとする種別に係る半年以上の実務経験(又はこれと同等と認められる1年以上の飼養経験)があり、かつ、1年以上の教育機関を卒業しているか、団体が行う客観的な試験で知識と技術の証明を得ていることが必要です(動物愛護管理法施行規則9条)。

民間のペットシッター資格があれば、動物取扱責任者になれますか?

民間の資格だけでは足りません。実務経験又は飼養経験に加えて、その資格が施行規則9条の教育機関の卒業や客観的な試験に当たるかどうかが問題になります。受講の前に、事業所の所在地の窓口で確認しておくと確実です。

一人で開業する場合、自分が動物取扱責任者になれますか?

要件を満たしていればなれます。一人で開業するペットシッターは、自分が動物取扱責任者を兼ねるのが一般的です。要件を満たさない場合は、要件を満たす人を選任する必要があります。

動物取扱責任者研修は、誰が受けるのですか?

第一種動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、都道府県知事が行う動物取扱責任者研修を受けさせなければなりません(同法22条3項)。

動物取扱責任者が辞めた場合はどうすればよいですか?

要件を満たす新しい責任者を選任し、登録事項の変更として届け出ます。新しい責任者にも研修を受けさせます。

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