このページの要点
- 料金は税込の総額で表示し、割増が重なる場合の計算式と延長の単位を書く。
- キャンセル料は区分の隙間をなくし、平均的な損害を超える部分は無効(消費者契約法9条1項1号)。根拠を説明できるようにする。
- 飼い主の家で契約しても、飼い主の請求による訪問なら、書面の交付やクーリング・オフの規定は適用されない(特定商取引法26条6項1号)。訪問の要請を記録に残す。
- 不可抗力で提供できなかったときはキャンセル料を取らず、振替か返金を選べるようにする。
料金表は、計算できる形で書く
ペットシッターの料金表で多い問題は、計算の仕方が読めないことです。事務所がレビューした料金表には、基本料金の欄が空欄、柱書には「税抜」とあるのに表の中は「税込」、深夜早朝と繁忙期の割増が重なる場合に足すのか掛けるのかが不明、「45分〜」の上限がないため延長がいつから始まるか読めない、といった点がありました。
事務所の改訂例:料金表の書き方
税込・割増・延長
ポイント消費者向けの価格は総額で表示します。割増が重なる場合の計算式を書き、延長の単位を決めると、請求のときに説明が要らなくなります。
料金表は規約の別紙とし、「規約の一部を構成する」と書きます。料金が動物の種類や頭数で変わらないなら、その旨も本文に書き、多頭の扱いと作業範囲の条をそろえます。小動物を受けるなら、保険の対象になっているかも料金とあわせて検討します。
キャンセル料:区分の隙間を埋める
依頼者の原案では、「一定日数前まで無料/前々日の一定時刻以降50%/前日の一定時刻以降〜当日100%」となっていて、無料の期限から前々日の一定時刻までの間が無料なのか有料なのか読めない、という隙間がありました。改訂では、時期の区分をすべてつなげ、「2日前」「前日」の意味と、基準となる時刻を「キャンセルの申出が当社に到達した時」と定めました。キャンセル料の計算の基礎(申込金額)も、基本料金・オプション料金・特別対応料金の合計と定義し、初回登録費用や実費を含まないことを明らかにしました。
| キャンセルの申出が到達した時期 | キャンセル料 |
|---|---|
| 提供日の2日前(前々日)の一定時刻まで | 無料 |
| 前々日の一定時刻から、前日の一定時刻まで | 申込金額の50% |
| 前日の一定時刻から当日まで(連絡のない不実施を含む) | 申込金額の100% |
消費者との契約では、解除に伴うキャンセル料のうち、平均的な損害を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。前日・当日の100%は、スタッフの時間を押さえる仕事の性質上、一定の合理性が認められる余地がありますが、拘束時間・移動・打合せの手間から積み上げた根拠を、社内で説明できる形にしておきます。消費者から求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努める義務もあります(同条2項)。規約には「平均的な損害の額を超える部分には適用しない。求めに応じ算定の根拠の概要を説明する」と書いておくと安心です。
回数を減らす場合・途中で解約する場合
「申込み回数を減らす場合は、前日〜当日のキャンセルと同じ扱いとし返金しない」と書いた原案がありました。1か月前に10回を8回に減らしても全額返さない、と読めてしまいます。改訂では、減らす回数に係る提供日ごとにキャンセル料の表を当てはめ、継続利用を途中で解約する場合も、未実施分の料金から、提供日ごとに表を当てはめたキャンセル料を差し引いて返す形にしました。事業者の都合で提供できなかった場合は全額を返し、その振込手数料は事業者が負担します。弁済の費用は債務者が負担するのが民法の原則(485条)だからです。
飼い主の家で申込書に署名すると、訪問販売になるか
事前打合せのために飼い主の家を訪問し、その場で紙の申込書に署名してもらう流れは、営業所以外の場所で契約を結ぶことになるので、形式的には訪問販売(特定商取引法2条1項1号)に当たります。訪問販売に当たれば、法定の書面の交付と、8日間のクーリング・オフが必要になります。
ただし、飼い主がその住居での契約の申込み又は締結を請求した場合は、訪問販売の規定のうち、書面の交付やクーリング・オフなど(同法4条から10条まで)が適用されません(同法26条6項1号)。飼い主から問合せを受け、「利用の申込みと事前打合せのための訪問」を依頼されて伺う流れなら、この適用除外に当たる可能性が高いといえます。事務所が手がけた規約では、適用除外の事実を記録で示せるよう、次のように整えました。
- 規約の申込みの条に「利用の申込み及び事前打合せのためにお客様宅を訪問することの要請を行う」と明記する
- 訪問の要請を受けた日時・方法・内容を記録し、保存する
- 申込書に「訪問の要請」の欄(要請の日、方法:電話・メール・問合せフォーム・その他)を設ける
- 申込書の交付を受けた旨のチェック欄を設ける
念のためのクーリング・オフが、キャンセル料を働かなくする
適用除外に当たるかどうかは事実にかかるので、「初めから8日間の撤回権を任意に認めておけば争いにならない」と考える事業者もいます。しかし、ペットシッターは「前日までに申し込み、翌日に提供」という短いサイクルの仕事です。8日間の無条件の撤回権を置くと、前日に「キャンセルします」と言えば50%、「クーリング・オフします」と言えば全額返金、という二つの制度がぶつかり、キャンセル料の規定が事実上働かなくなります。法律上のクーリング・オフでは、サービスを提供した後でも対価を請求できない(同法9条5項)ので、法定のクーリング・オフと同じ内容で任意に付けると、提供後でも8日以内なら全額返金になってしまいます。
事務所が手がけた規約では、任意のクーリング・オフは置かず、「提供が開始される前に限り撤回でき、その場合はキャンセル料の表による」に一本化しました。そのうえで「請求訪問に当たる場合は特定商取引法の書面の交付やクーリング・オフの規定は適用されず、クーリング・オフの制度はない。これに当たらない場合において訪問販売に該当するときは、同法の定めるところによる」と書いています。法律上クーリング・オフがない取引で任意に付けるなら、キャンセル料との関係を必ず整理します。
台風で行けなかったとき:キャンセル料を取らず、振替か返金
天災や交通機関の途絶など、どちらの責任でもない理由で提供できなかった場合は、通常のキャンセルとは分けて扱います。依頼者の原案に「当店の不可抗力及び無過失により中断・終了したときは返金に応じない」とありましたが、当事者の双方に責任のない理由で提供できなくなった場合、飼い主は料金の支払を拒むことができます(民法536条1項)。サービスを提供していないのに料金を保持する条項は、消費者契約法10条で無効とされる可能性が高いものです。
天災地変、暴風雨、豪雪、感染症の蔓延、交通機関の途絶その他いずれの責めにも帰することができない事由(以下「不可抗力等」といいます。)により本サービスを提供できない場合、当社はキャンセル手数料を請求しません。
前項の場合、お客様と当社は協議のうえ、他の日への振替又は返金のいずれかを選択し、協議が調わないときは返金します。返金の振込手数料は当社が負担します。
不可抗力等が生じた場合であっても、お預かりペットの生命又は身体に危険が及ぶおそれがあるときは、当社は可能な範囲で保護のための措置を講じます。
Webで申込みを受けるなら、特商法の表記
Webサイトで申込みを受け付ける場合は通信販売に当たり、事業者名・所在地・電話番号・代表者・料金・支払の時期と方法・提供の時期・キャンセルに関する事項などを表示します(特定商取引法11条)。申込みの最終確認画面の表示も必要です(同法12条の6)。問合せフォームを「申込み」ではなく「問合せと訪問の依頼の窓口」として位置づけるなら、規約でもそのように書き、フォームの送信が申込みと読めないようにしておきます。ペットシッターは特定継続的役務提供の指定業種に入らないので、継続利用・高額でもその規制は及びませんが、通信販売の表示と消費者契約法は別に及びます。
特商法表記には、事業者の表示とは別の欄に「第一種動物取扱業の登録」の欄を設け、登録番号・有効期間・動物取扱責任者などをまとめて載せると、広告に登録事項を載せる管理の基準にも沿う形になります(第一種動物取扱業の登録)。
ご相談の場面から:料金・キャンセルのご相談
規約を消費者向けに直したいのですが、すでに申し込んでいるお客様にも適用できますか?
規約を多数の利用者に共通する定型約款として作っている場合、変更が利用者の一般の利益に適合するか、契約の目的に反せず、変更の必要性・内容の相当性などに照らして合理的であることが前提で、変更の効力が生じる時期を定め、変更の内容と時期を事前に周知する必要があります(民法548条の4)。利用者に不利な変更は、同意しない利用者が効力の発生前に無償で解約できる手当てを置くと、変更の合理性を説明しやすくなります。
利用者宅で申込書に署名をもらっています。クーリング・オフの書面が必要ですか?
利用者から訪問の依頼を受けて伺い、その場で契約する場合は、適用除外に当たる可能性が高いです。依頼の日時・方法を申込書と記録に残し、こちらから訪問を勧めないことが前提です。適用除外に当たらない場合に備えて、申込書の交付は必ず行います。
初回登録費用と事前打合せの出張交通費
ペットシッターには、初回の事前打合せのときに、初回登録費用と出張交通費を受け取る料金の組み方がよくあります。この費用を、キャンセルや撤回のときに返すかどうかは、キャンセル料の規定と一緒に決めておきます。事務所が手がけた規約では、「初回登録費用は返還しない。ただし、特定商取引法の撤回・解除が行われた場合、又は不可抗力等により本サービスを提供できなかった場合はこの限りでない」としました。あわせて、キャンセル料の計算の基礎となる申込金額に、初回登録費用と実費を含めないことを定義で明らかにしています。事前打合せの位置づけと申込書の確認の欄は、同意書・カルテで解説しています。
原案に「必要経費及びキャンセル手数料を除いた金額を返金します」と書かれていた例もありました。「必要経費」が定義されていないので、キャンセル料とは別に経費を差し引く、二重の控除ができる書き方になっていました。差し引くものは、定義するか削ります。
- 初回初回登録費用、事前打合せの出張交通費とその加算の基準
- 時間帯・時期深夜早朝・繁忙期の割増(計算式は料金表による)
- 訪問先駐車場代、遠方の加算
- 鍵合鍵の郵送の費用
- 緊急時動物病院への搬送の交通費、受診費用・フードなどの立替金
- 書類・支払領収書の郵送の費用、振込手数料(事業者の都合による返金を除く)
料金表・規約・申込書・特商法の表記で、延長料金の単価などが食い違っていないかを照合します。改定するときは、すべての書類で同じ金額・同じ適用開始日にします。
料金表を改定するとき
料金表を改定するときは、改定後の内容と適用の開始日を、開始日の一定の日数前までにホームページに載せて知らせることと、改定後の料金表は開始日より前に成立した契約には適用しないことを、規約に書いておきます。ペットシッターの申込みは、一回ごとに成立する契約の積み重ねであることが多いので、この書き方で、すでに予約を受けている分は旧料金、開始日以降の申込みは新料金、と整理できます。継続利用の契約に新しい料金を及ぼしたい場合は、規約の変更の手続によるか、更新のときから新料金を適用すると書いておきます。
未払いのときの書き方
ペットホテルの原案に、「キャンセル料が支払われない場合は、催告の後7日を経過した時点で、内容証明郵便の送付、訴訟、弁護士による回収を行います」と、手続を並べた条項がありました。事業者が権利を行使することの予告にすぎず、法的な効果はほとんどありませんが、利用者には威圧的に読めます。規約に書くなら、支払期限と、未払いがある間は次回の申込みを受けないことができる、という形が実務的です。次回の申込みを受けないことは、契約の自由の範囲にとどまります。
よくあるご質問
当日キャンセル100%は取ってよいですか?
スタッフの時間を押さえる仕事なので理由は立ちますが、平均的な損害を上回る分は効力を失うことがあります。前々日・前日・当日と時期で段階を設け、求められたら根拠を説明できるようにしておきます。
利用者宅で申込書にサインをもらうと、クーリング・オフが必要ですか?
利用者から訪問の依頼を受けて伺い、その場で契約する場合は、特定商取引法26条6項1号の適用除外に当たる可能性が高いです。依頼の日時と方法を記録に残し、こちらから訪問を勧めないことが前提です。
念のためクーリング・オフを付けておけば安心ですか?
前日申込み・翌日提供のような短い仕事では、8日間の撤回権がキャンセル料とぶつかり、キャンセル料が事実上取れなくなります。提供の開始前の撤回にキャンセル料の表を当てはめる形に一本化する方法があります。
台風で訪問できなかった場合、料金はどうしますか?
不可抗力ならキャンセル料は取らず、振替か返金を選べるようにします。返金の振込手数料は事業者の負担とするのが原則です。
料金の表示は税込・税抜のどちらにすべきですか?
消費者向けの価格は、消費税を含む総額で表示します。割増が重なる場合の計算式や延長の単位も、料金表に書いておきます。
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