鍵の預かりと、留守宅に入るときのルール

留守宅を預かる仕事の中心は、鍵です。利用者の不安が最も大きい領域だからこそ、規約に正面から書きます。

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自社の梱包・発送の落ち度まで免責する書き方は、その免責の一文全体が無効になりかねません。

このページの要点

  • 受渡しは対面又は対面受取りの郵送に限り、郵便受けへの投函による返却はしない。
  • 鍵に住所・氏名を付けず識別番号で管理し、対応表は別に保管する。受領・持出し・返却を記録する。
  • 暗証番号・カード・警備の解除方法は事前に申告してもらい、変更前の通知の義務を定める。
  • 紛失時は鍵・シリンダーの交換費用を負担すると明記し、故意・重大な過失を除く別枠の上限を置く。

留守宅を預かる仕事の中心は、鍵

ペットシッターは、飼い主が旅行や出張で家を空けている間に、預かった鍵で家に入って世話をする仕事です。利用者にとって最も不安が大きいのは、動物の世話そのものより「鍵を預けて大丈夫か」という点かもしれません。事務所がレビューした規約では、鍵の受渡しの方法には触れていても、紛失したときの責任と費用、複製の禁止、保管の方法、返却が済んだことの確認の方法が書かれていない例がありました。

加入している保険も、預かった動物は補償の対象でも、鍵などの「受託物」は対象外としていることが多くあります。利用者の不安が最も大きい領域なのに、規約にも保険にも手当てがない、という状態は珍しくありません。鍵の紛失には正面から責任を負うと規約に明記することが、利用者の信頼につながります。

受渡しの方法を限る

事務所の改訂例:鍵の受渡しと返却

郵送・投函による返却

改訂前鍵はレターパックでお送りいただき、終了後は郵便受けへの投函でお返しします。郵送・投函による紛失等について、当店は一切の責任を負いかねます。(依頼者原案)
改訂後鍵の受渡しは、対面での手渡し、又は対面での受取りを要する郵便による郵送に限ります。郵送の過程での紛失等は当社の責任ではありませんが、当社が返送する場合の梱包・発送の手続に不備があったことによる損害は当社が責任を負います。郵便受けへの投函など対面によらない方法での返却はいたしません。

ポイント自社の梱包・発送の落ち度まで免責する書き方は、その免責の一文全体が無効になり、郵送の過程の事故についての免責も主張できなくなりかねません。運送の過程の事故と、自社の手続の不備を書き分けます。郵便受けへの投函は防犯上の危険が大きいので、方法自体を採らない整理にしました。

鍵を受け取ったら、預り証を発行します。預かった鍵の本数・種類・受渡しの日を申込書の鍵の欄にも書き、利用者と事業者の双方が控えを持ちます。有事には「何本預かったか」が争点になり得るからです。対面での返却は、飼い主本人又は同居の家族に限ると決めておきます。

管理の方法を、規約とプライバシーポリシーの両方に書く

鍵の管理の方法(例)
  • 保管施錠できる場所に保管し、その場所の鍵は管理の責任者が管理する
  • 識別鍵に氏名・住所など住居を特定できる情報を付けず、識別番号で管理する。番号と利用者の対応表は鍵と別に保管する
  • 記録受領・持出し・返却のたびに、日時と担当者を記録する
  • 使用提供の目的以外に使わない。複製しない。スタッフ・代行者以外に渡さない
  • 長期の預かり定期利用など希望があれば長く預かり、契約の終了時に返却する。自動更新する契約では、更新後の期間の満了時に返却する
  • 紛失・毀損直ちに通知し、鍵・シリンダーの交換に現に要した費用を負担する(故意・重大な過失の場合を除き、家財の損傷と同じ別枠の上限による)

同じ項目をプライバシーポリシーの安全管理措置にも置くと、鍵と住居の情報を一体で守っていることが伝わります。

暗証番号・カード・警備の解除方法

最近は、物理的な鍵のほかに、共用玄関の暗証番号やカード、住戸の電子錠、警備会社の警報設備の解除方法を預かることも増えています。事務所が手がけた規約では、次の事項を新たに設けました。

  1. 合鍵のほかに必要な入館・入室の手段(共用玄関の暗証番号・電子キー・カード、住戸の電子錠の暗証番号、警報設備の解除・設定の方法と符号、宅配ボックスの符号など)を、事前打合せで飼い主が知らせる
  2. 事業者はこれらを秘密情報・個人情報として管理し、提供の目的以外に使わず、スタッフ・代行者以外に開示しない
  3. 飼い主は、変更する場合は事前に知らせる。知らせなかったために入れず提供できなかった場合は、料金を返さず、損害の責任も負わない(事業者の故意・重大な過失の場合を除く)
  4. 管理組合・管理会社への第三者の立入りの届出が必要な集合住宅では、飼い主が自ら手続する
  5. 警報設備の誤作動などで警備会社・警察が出動した費用は、事業者の責めに帰すべき事由による場合を除き負わない

入るとき・出るときのルール

訪問の入室から退室まで(例)

  1. 出発前その日の案件の鍵だけを持ち出し、記録する
  2. 入館カルテに書かれた方法で入る。他の住人が扉を開けた機会に一緒に入らない(共連れの禁止)。インターホンは原則として鳴らさない
  3. 入室玄関の開閉時の飛び出しに注意し、入室後は施錠する。家の中の動物全員の所在を確かめる
  4. 世話カルテの内容を実施する。途中で家を離れない(事前に承諾がある場合を除く)
  5. 退室施錠、ケージ・サークル・扉・窓などの開口部、火の元・水道、動物の状態を確認する。一度退室したら、原則として再入室しない
  6. 帰着後鍵を返却・保管し、記録する

窓の扱いには注意が必要です。換気のために窓を開けておいてほしい、という家もあります。事務所が手がけた書類では、「カルテ又は飼い主が指定した状態にする。指定がないときは入室時の状態に戻し、入室時に施錠されていたものは施錠する。開けたままにする指示があっても動物が外に出るおそれがあるときは、外に出ない措置をとったうえで施錠し、その旨を報告する」としました。飼い主の指示と脱走の防止がぶつかる場面の解き方として参考になります(脱走と事故の防止)。

スタッフに鍵を渡すとき

業務委託のスタッフに鍵を預ける事業者は、スタッフとの契約にも鍵の条項を置きます。事務所がレビューした業務委託契約書の原案には、鍵に関する定めが一切ない例がありました。利用者との約束を守るには、実際に鍵を持つスタッフとの約束が欠かせません。

スタッフとの契約の鍵の条項(骨子)
1

鍵・暗証番号その他の入館・入室の手段(以下「鍵等」といいます。)の引渡し及び返還の都度、日時・種類・本数・受領者を記録し、双方がその記録を保有します。

2

受託者は、鍵等を他の物と区別して施錠して保管し、業務以外の目的に使用せず、お客様を特定できる表示をせず、複製しません。暗証番号を記録するときは、第三者が容易に知り得ない方法によります。

3

受託者は、鍵等を紛失し、又は第三者に知られたおそれがあるときは、直ちに事業者に通知します。

4

受託者は、案件の終了後、合意した期限までに鍵等を返還します。相当の期間を定めて催告しても返還しないときは、受託者の責めに帰すべき事由により紛失したものと推定し、事業者は錠・暗証番号を変更することができます。

錠の交換などの費用の分担は、一律の上限で決めるより、保険で先に補い、残りは事故の原因と双方の帰責性で協議する、とする形もあります(スタッフとの業務委託契約書)。

ご相談の場面から:鍵の預かりのご相談

鍵を紛失した場合、いくらまで負担すべきですか?

鍵とシリンダーの交換に現に要した費用を負担すると書き、家財の損傷と同じ別枠の上限を置く設計が一般的です。上限を置く場合は、故意・重大な過失の場合を除くことを同じ文の中に書きます。保険で受託物が対象外になっていないかも確認してください。

利用者から、鍵を郵便受けに入れておくので取って入ってほしいと言われました。

郵便受けに入れた鍵は、第三者が取り出すおそれがあります。受渡しの方法を対面と対面受取りの郵送に限っているなら、その方針を説明して別の方法をお願いします。例外的に受ける場合は、利用者の指定によることと、その方法による被害の扱いを書面で確認しておきます。

鍵が開かない・入れないとき

預かった鍵で玄関が開かない、オートロックの暗証番号が変わっている、警報設備の解除の方法が分からない。留守の家の前で、スタッフが一人で困る場面は珍しくありません。こうした場面で、スタッフが自分の判断で色々な操作を試すと、警報の作動や設備の破損につながります。事務所が手がけた委託業務仕様書では、次のように手順を決めました。

  1. オートロック・キーボックス・宅配ボックス・警備システムは、カルテに書かれた方法で操作し、書かれていない操作は試みない
  2. 鍵が開かないときは、まずカルテを確認し、それでも開かなければ飼い主に確認する。飼い主と連絡がつかなければ事業者に確認する
  3. 他の住人が共用玄関を開けた機会に一緒に入ることはしない
  4. 入れなかった場合は、到着した時刻、試みたこと、連絡の経過を記録して報告する

入れなかった理由が、飼い主が暗証番号の変更を知らせていなかったことにあるなら、料金を返さないことと、その間の動物の損害の扱いを、規約の暗証番号の条で決めておきます。理由がスタッフの側にある(別の家の鍵を持ってきた等)なら、事業者の責任の問題になります。入れなかったときに動物の生命に危険が及ぶおそれがある場合(真夏の室内に閉じ込められている等)の対応も、飼い主と事前に話し合っておくと、現場で迷いません。

途中で家を離れるとき・忘れ物で戻るとき

留守の家への出入りは、回数が増えるほど、防犯の面でも、事故のときの事実の確認の面でも、説明が難しくなります。事務所が手がけた委託業務仕様書では、世話の途中で家を離れないこと(業務上必要で、飼い主が事前に承諾した場合を除く)、離れた場合は離れた時刻・戻った時刻と理由を報告すること、一度退室したら再び入室しないことを原則にしました。忘れ物などでやむを得ず戻る場合は、飼い主の承諾を得てから入室し、時刻と訪問先が分かる写真を送ることにしています(写真の位置情報の扱いは写真・個人情報)。誰がいつ入ったのかを、後から飼い主に示せるようにしておくためです。

鍵の返却の時期も、継続の案件を考えて決めます。案件が終われば、合意した期限まで(定めがなければ完了から一定の日数以内)に返すのが原則ですが、同じ飼い主から続けて依頼を受ける見込みがあるときは、合意によりスタッフが保管を続けられる形にしました。鍵の条項は、スタッフとの契約が終わった後も効力を持つことを、存続する条項として明記しておきます。

錠や暗証番号の変更の費用を、スタッフとの間でどう分担するかは、一律の上限で決める方法と、事故の原因と双方の帰責性で決める方法があります。後者による場合、損害賠償の条(保険で先に補い、残りは原因・帰責性・事業者の指示や情報の寄与で協議する)の「例による」と書くだけでは、費用は「賠償」ではない、返還の遅れは「事故」ではない、という読み方の余地が残ります。読み替えの規定を置いて、費用にも、返還の遅れの場面にも、同じ定めが働くようにしました。

よくあるご質問

ペットシッターで鍵を預かるときに必要な書類は何ですか?

鍵の預り証と、申込書の鍵の欄(本数・受渡し日・返却の時期と方法)です。規約には、受渡しの方法、管理の方法、紛失時の対応と費用、返却を書き、同じ管理の方法をプライバシーポリシーの安全管理措置にも置きます。

鍵を郵送でやり取りしてもよいですか?

対面での受取りが必要な郵送方法に限り、郵送中の事故は事業者の責任ではないとしつつ、自社の梱包・発送の不備による損害は自社が責任を負う、と書き分けるのが安全です。郵便受けへの投函による返却は、防犯上の危険が大きいので避けます。

暗証番号や警備の解除方法も預かる場合、何を書けばよいですか?

事前打合せで申告してもらうこと、秘密情報として管理すること、変更する前に知らせてもらうこと、知らせがなく入れなかった場合の扱い、警備会社が出動した場合の費用を書きます。

鍵を紛失したら、どこまで責任を負いますか?

鍵・シリンダーの交換に現に要した費用を負担すると書き、故意・重大な過失を除く別枠の上限を置くのが一般的です。保険で鍵などの受託物が対象外になっていることが多いので、保険の内容もあわせて確認します。

業務委託のスタッフに鍵を渡すときの注意点は?

授受の記録、施錠保管、複製の禁止、紛失時の通知、返却の期限、返却しない場合の紛失の推定、錠の変更費用の分担を、スタッフとの契約に書きます。その日の案件以外の鍵を持ち出さないことも決めておきます。

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