このページの要点
- スタッフ本人の登録の要否は自治体の運用による。本人も登録を持つなら、どちらの登録に係る事業として行うかを契約で決める。
- 雇用のスタッフ向けのマニュアルを配らず、結果の指定で書いた委託業務仕様書を作る。
- 報酬は区分ごとの定額にし、率・時間単価・25%や50%の割増率を契約書に書かない。
- フリーランス法の取引条件の明示(3条)、60日以内の支払期日(4条)、禁止行為(5条)、中途解除の予告(16条)を書式に落とす。
業務委託でシッターを抱えるときの三つの前提
スタッフを業務委託で確保して事業を広げるペットシッターの事業者は少なくありません。事務所がレビューした業務委託契約書の原案には、業務内容、報酬(販売価格の一定割合)、秘密保持、顧客への直接の勧誘の禁止、損害賠償、即時解除などが書かれていましたが、次の三つの前提について一切の定めがありませんでした。
- スタッフ本人に第一種動物取扱業の登録が必要か
- 事業者が希望する運用で、スタッフが労働者と評価されないか
- フリーランス法の義務を果たしているか
加えて、鍵・緊急時・個人情報・保険という、この業務に固有の事項もありませんでした。利用者との規約で約束した内容を、実際に世話をするスタッフに果たしてもらう仕組みがなかったわけです。
スタッフにも登録は必要か
雇用のスタッフは、事業者の登録の下で、動物取扱責任者の管理を受けて働くので、本人の登録は要りません。業務委託のスタッフは、従業員ではなく独立した事業者として保管を業として行うことになるので、本人の登録が必要になる可能性があります。この点は自治体の運用で分かれ得るところです。
事務所が関わった事例では、依頼者が所管の自治体に確認したところ、「業務委託を受けた本人が独立して第一種動物取扱業を営む者でなければ、本人の登録がなくても、事業者の登録の下で業務を行うことは可能」との回答でした。それでも依頼者は、保険の都合から、自ら登録を受け、かつ自分で賠償責任保険に加入している人に限って委託すると決めました。法令の要請ではなく取引先を選ぶ基準ですが、自ら登録を受け、保険料を負担する人に限ることは、スタッフの事業者としての性格を強く裏づけます。
スタッフも登録を持つ場合に、契約で決めること
訪問する職員の登録事項への記載や、識別章をどちらのものにするかは、自治体の運用で答えが分かれ得るので、所管の窓口に確認します。
労働者と評価されないために
業務委託の契約書を交わしていても、実際の働き方が雇用と同じなら、労働者と評価されます。判断は、仕事の依頼を断る自由、業務の遂行への指揮命令、時間・場所の拘束、代わりの人に任せられるか、報酬の性格などを総合して行われます。ペットシッターには、トラックや大工道具のように「自ら負担する機材」がないため、事業者としての性格を示す材料が乏しく、その分、断る自由と遂行の方法の裁量を、契約と運用の両方で確保する必要があります。
| 運用 | 評価 | 整え方 |
|---|---|---|
| 案件ごとの依頼と受諾 | 業務委託を支える | 断ったことを理由に不利に扱わない。断られた案件も記録に残す |
| 業務の報告 | 問題ない | 報告の様式は成果の仕様として定める |
| 訪問時間の指定 | 顧客との約束による時刻ならやむを得ない | 時刻を含めて提示し、合わなければ断れる。変更の申出も認める |
| 研修の実施 | 受講を義務づけると労働者に近づく | 契約前の「業務説明と実務確認」として、選定の過程で行う |
| マニュアルの遵守 | 最も危険 | 委託業務仕様書に作り直す |
同じ日に複数の案件を頼む場合も注意します。個々の時刻が顧客との約束でも、事業者が一日の案件を時間順に割り付けると、始業から終業まで拘束したのと同じ外形になります。案件ごとに提示して受諾を得ること、案件の間の時間はスタッフが自由に使えること、移動について指示しないことを書きます。
マニュアルを「委託業務仕様書」に作り直す
雇用のスタッフ向けに作った水準の高い業務マニュアルは、教育の資料として優れていますが、そのまま業務委託のスタッフに配ると、遂行の方法まで拘束していると見られます。事務所が点検したマニュアルでは、記載を一つずつ次の三つに分けました。
| 区分 | 内容の例 | 扱い |
|---|---|---|
| そのまま課してよい(約6割) | 脱走の防止、玄関の開け方、入室後の施錠、全頭の所在確認、カルテの記載事項、共連れの禁止、不在を伝えない、不要な場所を見ない、記録と報告、緊急時 | 仕様書にそのまま入れる |
| 結果の指定に書き換える(約2割) | 退室時の玄関(スリッパの向きをそろえる)、水回り(シンクの水跡を拭く)、食器の戻し方、トイレの砂をならす | 「どのような状態にするか」で書き、写真は「水準の例」として残す |
| 課さない(約2割) | 身だしなみの指定、私物の使用の制限、1回の世話の中の時間配分、「出勤」「遅刻」など雇用の言葉 | 仕様書からは外す |
最も重い一件は、言葉ではなく仕組みでした。業務用のチャットツールのカレンダーで「自分の当日の予定(顧客名・訪問先・開始時刻・前後の予定と移動時間)を確認する」という運用です。事業者が予定を入れ、スタッフが確認する形は、案件ごとに提示して受諾する形と矛盾し、時間の拘束に直結します。受諾済みの案件だけがカレンダーに載る形に改めました。
報酬の決め方
繁忙期・深夜早朝の区分を1.25倍・1.5倍の倍率で組んでいた単価表もありました。この率は労働基準法の割増賃金の率と一致し、列の名前も「深夜早朝」でした。金額を保ったまま定額の加算表に組み替え、列の名前を「時間帯区分」とし、各区分の加算額がちょうど25%・50%にならないよう調整しました。交通費も、実費を精算するより「1案件につき移動費相当額○円を加算」とし、「補助」「支給」「手当」という言葉は使いません。報酬が税込か税抜かは、必ず別表に明記します。
入退室の時刻の写真は、タイムカードになり得る
入室・退室のときに時計を写した写真を報告する運用は、顧客への報告として合理的です。しかし、事業者がそれを集計すれば、タイムカードと同じ働きをします。事務所が手がけた契約では、記録を作る目的(顧客との約束の時間に世話が提供されたことを示す、事故のときに確認する、延長を確認する)を書き、使ってよい用途と、使ってはならない用途(稼働時間の集計、勤怠の管理、評価・指導など人事管理に類する目的)を分け、確認は案件ごとに行い日・週・月で集計しない、と定めました。同じ内容を、改訂の対象になる仕様書だけでなく、契約書の本体にも置いています。「集計表を一つ作ると条文が死ぬ」ので、運用もあわせて徹底します。
フリーランス法の義務を、契約書と書式に落とす
| 条文 | 内容 | 契約・書式での手当て |
|---|---|---|
| 3条(取引条件の明示) | 業務の内容・報酬の額・支払期日などを、書面又は電子メール等で直ちに明示する(業務委託をする全ての事業者) | 案件ごとの発注書兼取引条件明示書。複数案件を一通で示し、一部だけ受けられる形に |
| 4条(支払期日) | 役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内(特定業務委託事業者) | 締切と支払日を、どの案件でも60日を超えない組合せに |
| 5条(禁止行為) | 報酬の減額、買いたたき、購入・利用の強制、無報酬の会議・研修などの要請、不当な変更・やり直し(特定業務委託事業者が行う1か月以上の業務委託) | 指定の物品の購入や報酬のない研修を求めないと書く |
| 14条(ハラスメント対策) | 相談に応じる体制の整備(特定業務委託事業者) | 事業者自身の相談窓口を定めて示し、公的な相談窓口もあわせて案内する |
| 16条(中途解除の予告) | 6か月以上の継続的な業務委託の解除・不更新は30日前までに予告 | 即時解除の事由を客観的な事実で書く |
報告書の品質の基準を「ペットの表情が温かく伝わり、安心して楽しく読める内容」にしたい、というご希望をいただいたことがあります。素敵な考えですが、達成したかどうかの判断が事業者の評価に委ねられ、査定の外形になります。この表現は仕様書の目的の欄に置き、義務の内容は「ペットの姿が分かる写真○枚以上、観察した事実○文字以上(食べ方・遊び方・過ごした場所を含む)」のように事実の種類と量で書きます。撮影が適当でない事情があれば、その理由の報告で足りる、と書いておかないと、撮影できないこと自体が契約違反になってしまいます。
お泊りは、業務委託で受けるか
お泊りは、夜間にその家にいること自体が仕事の内容なので、場所の拘束は書き方で消せません。「夜間もシッターが在宅している安心」を商品にするなら、「世話をする時以外は滞在しなくてよい」という建て付けでは商品になりません。事務所が関わった事例では、お泊りを業務委託の対象から外し、雇用のスタッフが担当する整理にしました。雇用で担当する場合の労働時間の扱いなど、労働条件の整備は社会保険労務士にご相談ください。
鍵・保険・直接取引
鍵の授受の記録、保管、返却の期限と返さない場合の紛失の推定は、鍵と留守宅で解説した条項をスタッフとの契約にも置きます。保険の要件は、実際に加入できる商品を保険会社に確かめてから決めます。預かった動物の死傷について、対人・対物と同じ水準の高額の補償を出す商品は少ないので、要件の金額を分けて定めた事例もあります。
顧客との直接取引の禁止は、範囲を「事業者を通じて知った顧客」に限り、契約の時点でスタッフがすでに取引していた顧客と、独自に知り合った顧客を除き、期間を契約中と終了後1年とするなど、絞って定めます。違約金を定めるなら、失われた利益に対応する額にし、違約罰であることと、超える損害の請求を妨げないことを書きます(民法420条3項の推定を外すため)。
ご相談の場面から:スタッフとの契約のご相談
業務委託のシッターにも、うちのマニュアルを守ってもらいたいのですが。
安全・法令・顧客の指定・財産・個人情報に関する事項は、そのまま守ってもらえます。手順や段取りは「どのような状態にするか」に書き換え、身だしなみや服務規律は課さないでください。雇用のスタッフ用のマニュアルをそのまま配らず、業務委託のスタッフには委託業務仕様書を別に作ることが大切です。
支払通知書に返事のないスタッフの分は、確認が取れるまで払わなくてもよいですか?
払わなければなりません。確認の回答がないことを理由に支払を留保することは、フリーランス法の支払期日の規律に反します(発注者が特定業務委託事業者であれば、同法4条5項)。回答がなければ改めて回答を求めつつ、支払期日までに支払います。
受けた案件にスタッフが行けなくなったとき
「受けた後のキャンセルに責任を持ってほしい」というのは、多くの事業者のご希望です。ペットシッターでは、一回の不実施が、留守の家で動物が世話を受けられないことに直結します。事務所が手がけた契約では、行けなくなった理由で扱いを分けました。
| 理由 | 扱い |
|---|---|
| やむを得ない事由(本人・同じ生計の人の病気やけが、感染症、事故・災害、親族の死亡、看護・介護、妊娠・出産・育児、気象警報、交通機関の停止) | 違約金なし。直ちに事業者に知らせ、代わりの手配に協力する |
| 正当な理由のない不実施 | その案件の報酬相当額を上限とする違約金。実際の損害は損害賠償の条で別に請求できる |
| 直前の不実施の繰返し | 案件の提示の方法について協議を申し入れられる。ただし、診断書など要配慮個人情報を含む資料の提出は求めない |
違約金や損害賠償の額は、報酬から差し引かない(相殺しない)ことにしました(事故のときの求償の手続は賠償と保険)。外から見て報酬を減らしたように見える形を避けるためです。なお、労働者であれば違約金を定めることは禁止されています(労働基準法16条)。業務委託の契約でも、実態から労働者と評価されれば、違約金の定めは同条に反して無効となるため、額は相当な範囲にとどめます。
事業者の都合で案件がなくなったとき
逆に、飼い主がキャンセルしたなどの理由で、受けてもらった案件が実施されなくなることもあります。依頼者の原案には、この場合の定めがありませんでした。改訂では、事業者は直ちにスタッフに知らせ、知らせた時期に応じて、前日の一定時刻までは支払なし、それ以降開始時刻までは報酬の50%、開始時刻の後又はスタッフが到着した後は全額を支払うこととし、スタッフが移動を始めていれば到着の前でも移動費相当額を加える、としました。移動を始めたかどうかは、出発のときに一報を入れる運用で確認します。
もう一つ、ペットシッターに固有の定めとして、咬み癖や持病など安全のために必要な情報が訪問の開始までに提供されないときは、スタッフは案件を辞退でき、違約金を負わず、移動を始めた後なら移動費相当額を受け取れる、としました。危険を知らされないまま留守の家に一人で入ることを、スタッフに強いないための条項です(安全の情報の記録はカルテ)。
ご相談の場面から:雇用と業務委託が混在するときのご相談
雇用しているスタッフと業務委託のシッターが、同じお客様を担当することがあります。
連絡と指示の系統を分け、同じ連絡網・同じマニュアル・同じ名札で同じ指示を受けている外形を作らないことが大切です。業務委託のシッターには委託業務仕様書とカルテ(飼い主が指定した事項)だけを渡し、雇用のスタッフ向けの指示が混ざらないようにします。夜間の滞在そのものが商品になるお泊りのような業務は、雇用のスタッフに担当してもらう判断もあります。
延長と時間帯の区分の決め方
報酬を訪問の区分ごとの定額にしても、延びた分は時間で数えるしかありません。延長は「1単位ごとに○円を加える」形で差し支えなく、基本の報酬が定額なら、全体が時間給と見られることはありません。事務所が手がけた単価表では、訪問の開始前に区分を変える・時間を追加する場合(案件の条件の変更として、明示と承諾の手続を経る)と、訪問を始めた後の延長(現場で次の予定を動かす負担がある)とで、単価に差を設けました。スタッフは延長に応じる義務を負わない、とも書いています。応じる義務があると、承諾した範囲を超える仕事を強いることになるからです。
繁忙期や早朝・夜間の区分は、別表に期間と時刻で列挙し、案件を提示した時点で区分が決まっている形にします。判定は、実際に入室した時刻ではなく、発注書に書いた訪問の開始時刻によります。事業者が後から区分を判定できる形にすると、報酬の額が事業者の判断で動くことになり、取引条件の明示の趣旨にも合いません。
トリミング・グルーミングの施術者との契約
猫専門のグルーミングサロン(場所貸しの形はペットホテルのページ)が施術者と結ぶ業務委託契約書をレビューした事例では、業務の内容、1件あたりの定額の報酬、秘密保持、雇用関係がないことは書かれていましたが、次の事項が抜けていました。「協議する」に委ねる部分が多く、関係が悪化したときに弱い契約になっていました。
- 施術中の事故(猫が暴れてのけが、体調の急変、器具による傷)の責任の分担。施術者の故意・過失による場合、サロンの設備や指示に原因がある場合、猫の突発的な動きによる場合を分ける
- 飼い主からの苦情の一次対応、再施術の費用、返金の判断の権限、口コミへの対応、施術者が飼い主に直接連絡してよいか
- 報酬が発生する条件(当日・無断のキャンセル、途中で中止した場合、再施術、メニューごとの単価、指名料)
- 設備・備品(ドライヤー・バリカン・シンク・ケージ)が壊れたときの負担と、通常の使用による劣化との区別
- 再委託の禁止(誰が施術するかは契約の本質に関わる)、顧客情報の持出しの禁止、重大な違反の場合の即時解除
報告の書き直しを求められる場面も限っておきます。事務所が手がけた仕様書では、補正を求められるのは、仕様を満たしていない場合、事実に誤りがある場合、期限を過ぎた場合に限り、言い回しや表現の好みでは求めない、と書きました。仕様を満たす報告をさらに書き直してもらうなら、それは追加の委託として別に報酬を払います。報告の出来を事業者が自由に評価して直させる形は、査定の外形に近づくからです。
よくあるご質問
業務委託のシッター本人にも第一種動物取扱業の登録が必要ですか?
自治体の運用によります。「本人が独立して営むのでなければ、事業者の登録の下で業務を行える」とする回答の例があります。本人も登録を持つ場合は、どちらの登録に係る事業として行うかを契約で確定させます。
マニュアルを守らせてもよいですか?
安全・法令・顧客の指定・財産・個人情報に関する事項はそのまま課せます。手順や段取りは「どのような状態にするか」に書き換え、身だしなみや服務規律は課さないでください。
報酬を時給で払ってはいけませんか?
時間単価は労働者性を補強する要素になります。訪問の区分ごとの定額にし、売上の何%という率も契約書に書かないのが安全です。深夜や繁忙期の加算も、25%・50%の率ではなく定額の加算にします。
入室・退室の写真で勤務時間を管理してもよいですか?
顧客への報告と事故のときの確認に使うのはよいですが、稼働時間の集計や勤怠の管理に使うと、業務委託の前提が崩れます。用途を契約で限定してください。
フリーランス法で、契約書に必ず書くことは何ですか?
業務の内容、報酬の額、支払期日などを、案件ごとに書面又は電子メール等で明示します(同法3条)。発注者が特定業務委託事業者なら、役務の提供を受けた日から60日以内の支払期日、ハラスメントの相談体制、6か月以上の継続的な業務委託の解除の予告なども必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。登録の手続や基準の運用は、事業所の所在地の都道府県・指定都市によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたペットシッター・ペットのお世話サービスの利用規約、申込書、同意書、スタッフとの業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 環境省 動物の愛護と適切な管理 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド