このページの要点
- ペットの情報も、飼い主と結び付けば飼い主の個人情報になる。
- 代行者・業務委託のスタッフへの提供は委託として扱い、監督する(個人情報保護法27条5項1号・25条)。
- 海外の決済・Webサービスを使うなら、保存先の国・地域を公表資料で確かめ、外国にある第三者への提供として同意を得る(同法28条)。
- 留守である情報は第三者に伝えず、リアルタイムのSNS投稿をしない。秘密保持の除外事由を不在の情報に及ぼさない。
ペットの情報も、飼い主と結び付けば個人情報
ペットの品種・名前・持病・服薬・咬傷歴・かかりつけ病院は、それ自体は人の情報ではありませんが、飼い主と結び付くことで、飼い主の個人情報を構成します。事務所が手がけたプライバシーポリシーでは、「これらの情報は、お客様と結び付くことにより、お客様の個人情報を構成する」と明記しました。
ペットシッターが扱う情報には、もう一つ大きな特徴があります。家の所在地・間取り・鍵の閉め方・防犯設備・在宅の状況は、漏れれば空き巣の被害に直結するということです。住居に立ち入り、鍵を預かって世話をする、特に高い信頼を前提とする事業として、情報の扱いを決めておきます。
- 飼い主氏名・住所・電話番号・メールアドレス
- 緊急連絡先氏名・関係・電話番号
- 住居所在地・間取り・立ち入ってよい範囲・設備・鍵の閉め方・防犯設備・鍵の識別番号と管理の記録
- ペット種類・品種・名前・性別・生年月日・体格・持病・服薬・アレルギー・予防接種・咬傷歴・性格・かかりつけ病院
- 獣医療の意思手術・麻酔・輸血・延命措置への意向、費用の上限
- 世話の記録日時・内容・報告・写真・動画
- 決済カード情報は事業者が取得・保有しないこと
緊急連絡先・同居人の情報は「本人以外から」取得する
緊急連絡先として届け出られる人や同居人の情報は、飼い主を通じて取得するもので、本人から直接もらうものではありません。プライバシーポリシーに「本人以外の者から取得する個人情報」の条を置き、利用目的を公表し、又は本人に通知します(個人情報保護法21条1項)。申込書に「緊急連絡先の本人に、個人情報を提供すること・利用目的・プライバシーポリシーの所在を知らせ、同意を得た」というチェック欄を設けると、運用でも手当てできます。
同居人の病歴や要介護の状態など、要配慮個人情報を取得することもあり得ます。要配慮個人情報を取得するには、あらかじめ本人の同意が必要です(個人情報保護法20条2項)。安全な世話のために必要な範囲でだけ取得し、使う、とプライバシーポリシーに書いておきます。
代行者・委託先に渡すときは「委託」として監督する
依頼者の原案で、利用者にとって最も不安が大きかったのが、「担当者に緊急事態が起きた場合は代行者に連絡し、合鍵を含めた個人情報を代行者に渡す場合がある」という一文でした。代行者が誰か、事前に知らせるのか、守秘義務や監督の枠組みはどうなっているのかが、何も示されていませんでした。
事務所の改訂例:代行者への情報の引継ぎ
代行者の条項
ポイント代行者への提供は、個人情報保護法の委託(27条5項1号)として整理し、委託先の監督(25条)を行います。委託先の選定の基準、秘密保持の義務、原則として事前に知らせることを、規約とプライバシーポリシーの両方に書きました。
業務委託のスタッフも、事業者の個人データの「委託先」です。委託先の監督は事業者の法律上の義務なので、個人情報の扱いについての指示は、業務委託の性質を損なうものではなく、法令の履行としてそのまま課してよい事項です。スタッフとの契約には、業務に必要な範囲を超えて情報を提供しないこと、漏えいが起きたら直ちに知らせること、個人情報保護委員会への報告と本人への通知は事業者が行うこと、終了時の返還・廃棄を書きます。
海外のサービスを使うなら、国名を公表資料で確かめる
カード決済に海外の決済代行事業者を使う場合や、海外の事業者のWebサイト作成サービスの問合せフォームで情報を受け取る場合は、外国にある第三者への提供(個人情報保護法28条)が問題になります。あらかじめ、外国の名称、その国の個人情報の保護の制度、提供先が講じる措置についての情報を本人に提供して、同意を得るのが基本です。提供先が個人情報保護委員会の定める基準に適合する体制を整えている場合など、同意に代わる方法もあります(同条1項・3項)。また、サービス事業者が個人データを取り扱わない保管だけの利用であれば提供に当たらず、安全管理措置の「外的環境の把握」の問題になります。
事務所が手がけたプライバシーポリシーでは、Webサイト作成サービスの事業者が公表している資料を確認したところ、サイトの訪問者の情報が複数の国・地域のデータセンターに保存され得ると明記されていました。同じ事業者の一般向けの説明だけを見ると、粗い記載しかなく、それに合わせると国が漏れてしまいます。どの資料を根拠にするかで結論が変わるので、問合せフォームで取得する情報の保存先として明記された資料を確かめ、すべての国・地域をプライバシーポリシーと安全管理措置の「外的環境の把握」に記載しました。地域が含まれる場合は「国又は地域」と書きます。
写真・SNSと「留守である」という情報
写真の同意は、報告のための撮影と、SNSや広告への掲載とで、二段階に分けて取ります(同意書・カルテ)。撮影・掲載のときは、間取り・表札・郵便物・位置情報など、住居を特定できる情報が写らないようにします。飼い主が撮影したスタッフの写真や動画を、事業者の同意なく第三者に提供・公開しないことも、スタッフの安全のために規約に書いておきます。
特に重く扱うのが「留守である」という情報です。飼い主が不在であること、外出先、旅行中であること、帰宅の予定、不在の期間を、第三者に伝えないことを規約とスタッフとの契約に書きます。世話の最中の写真をリアルタイムでSNSに投稿すると、飼い主の不在を公表することになるので、私的なSNSへの投稿は禁止します。
鍵と住居の情報の安全管理措置
プライバシーポリシーの安全管理措置には、鍵と住居の情報の扱いを具体的に書きます。鍵は施錠できる場所に保管し、その場所の鍵は管理の責任者が管理すること、鍵に住居を特定できる情報を付けず識別番号で管理し、番号と顧客の対応表は鍵と別に保管すること、預り証の発行と受領・持出し・返却の記録、複製しないこと、契約の終了時の返却と記録の廃棄を書きます(鍵と留守宅)。
個人情報の実体的な規定はプライバシーポリシーに集約し、規約は参照する条項にとどめるのが基本です(二か所に書くと改訂のときに食い違うため)。ただし、①代行者への情報の提供、②鍵の扱い、③写真の扱いの三つは、利用者の関心が特に高く、契約の条件の性質も持つので、規約にも要旨を残します。
保存期間
「再度の依頼に備えて、過去の内容を確認できるようにしておきたい」という事業者は多いものです。ただ、無期限に保有すると公表するのは、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去する努力義務(個人情報保護法22条)との関係で説明が難しくなります。氏名・連絡先・カルテ・世話の記録は最後の提供日から一定の年数保有し、継続利用の意向があればその後も保有でき、少なくとも一定の年数ごとに要否を見直す、という書き方が現実的です。写真・動画、鍵の記録も、それぞれ保有の期間を決めます。業務委託のスタッフには、報告に使わなかった写真を一定の日数後に自分の機器から消去してもらい、事故や苦情があったときは消去しないことを決めておきます。
ご相談の場面から:個人情報についてのご相談
海外の決済サービスを使っています。プライバシーポリシーに何を書けばよいですか?
外国にある第三者への提供として、外国の名称、その国の制度、提供先の措置についての情報を示して同意を得ます。申込書に同意の欄を設けると運用で手当てできます。Webサイト作成サービスの問合せフォームも、保存先の国・地域を公表資料で確認してください。
緊急連絡先の方の同意は必要ですか?
緊急連絡先の情報は飼い主を通じて取得するので、利用目的を本人が知り得るようにする必要があります。申込書に「本人に知らせ、同意を得た」というチェック欄を設ける方法があります。
スタッフが撮った写真を、広告に使うとき
業務委託のスタッフが世話の報告のために撮った写真を、事業者のホームページやSNSに使いたい、というご相談があります。この場合は、二つの承諾が必要です。一つは飼い主の掲載の同意(第2段階の同意)です。もう一つは、写真を撮ったスタッフの許諾です。業務委託の契約で著作権の扱いを定めていなければ、写真の著作権は撮影したスタッフに残るので、使いたい写真を特定して承諾を得ます。
逆に、スタッフが報告用の写真を自分のSNSに載せることは、著作権の帰属とは切り離して禁止しておきます。「業務で知った情報や撮影した写真を、業務以外の目的で使わず、第三者に開示し、又は公衆に送信しない」という定めです。服装や私生活の規律としてではなく、情報の目的外の利用の禁止として書くと、業務委託の性質とも矛盾しません。
写真の位置情報と、部屋番号の写真
スマートフォンで撮った写真には、撮影した場所の位置情報などのデータ(メタデータ)が含まれることがあります。報告の写真が第三者に渡れば、それだけで留守の家の所在が分かってしまいます。事務所が手がけた契約では、スタッフに、位置情報その他のメタデータが除かれる方法で写真を提出してもらうことにしました。
ただし、訪問先を間違えていないことを示すために、意図して部屋番号や表札を撮ることもあります。この写真は除去の対象から外し、そのかわり、報告と事実の確認のためにだけ使い、保険の請求や紛争の処理など必要な場合を除いて第三者に開示しない、と用途を限りました。住居を特定できる情報を「写さない」原則と、確認のために「あえて写す」場面とを、書き分けておくことが大切です。
よくあるご質問
ペットの病歴は個人情報ですか?
ペットの情報そのものは人の情報ではありませんが、飼い主と結び付くことで飼い主の個人情報になります。プライバシーポリシーの対象に含めます。
代行者にお客様の情報を渡してもよいですか?
代行者への提供は委託として扱い、委託先の選定の基準、秘密保持の義務、監督(個人情報保護法25条)、原則として事前に知らせることを、規約とプライバシーポリシーに書きます。代行者の行為についても事業者が責任を負います。
海外の決済サービスやWebサイト作成サービスを使う場合の注意点は?
外国にある第三者への提供として、外国の名称、その国の制度、提供先の措置の情報を示して同意を得ます(個人情報保護法28条)。保存先の国・地域は、サービス事業者の公表資料で確認します。
お世話中のペットの写真をInstagramに載せてもよいですか?
報告のための撮影とは別に、媒体と範囲を示した同意を取り、いつでも撤回できるようにします。間取りや表札が写らないよう注意し、リアルタイムの投稿は留守を知らせることになるので避けます。
お客様の情報はいつまで保存できますか?
最後の提供日から一定の年数保有し、継続利用の意向があればその後も保有でき、定期的に要否を見直す、という書き方が現実的です。無期限の保有を公表するのは避けます。
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本ページは一般的な情報提供です。登録の手続や基準の運用は、事業所の所在地の都道府県・指定都市によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたペットシッター・ペットのお世話サービスの利用規約、申込書、同意書、スタッフとの業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 環境省 動物の愛護と適切な管理 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド