このページの要点
- 報酬を受けて他人の動物を繰り返し世話するなら、副業でも第一種動物取扱業(保管)の登録が必要。無登録営業は100万円以下の罰金の対象(動物愛護管理法46条1号)。
- 事業所ごとに動物取扱責任者を置く。一人で始めるなら、自分が要件を満たすかを最初に確認する。
- 保険の対象外(脱走・病気・犬猫以外・動物同士のけんか・鍵の紛失)を確かめてから、規約の賠償の上限を決める。
- 利用規約・申込書・カルテ・同意書・特定商取引法に基づく表記・プライバシーポリシー・鍵の預り証をそろえ、登録の内容を全書類で同じ表記にする。
ペットシッターの開業は「登録」と「書類」の二本立て
ペットシッターは、店舗を持たずに自宅を拠点として始められる仕事です。副業として週末だけ受ける人も、最初からスタッフを抱えて法人で始める人もいます。どの形で始める場合も、開業の準備は二つに分かれます。一つは、動物愛護管理法の第一種動物取扱業(保管)の登録という「行政の手続」。もう一つは、飼い主との約束を形にする利用規約・申込書・カルテといった「契約の書類」です。
前者がないと営業ができず、後者がないと、事故のときに事業者を守るものがありません。このページでは、開業までに何をどの順番でそろえるかを、全体の地図として整理します。各論点の詳しい解説は、それぞれのページにつないでいます。
ペットシッターの開業までの道のり(例)
- 事業の形を決める訪問型だけか、自宅での預かりも行うか、散歩代行やお泊りを受けるか、スタッフを置くかを決める。登録の内容も、規約の特則も、ここで決まる
- 動物取扱責任者の要件を確かめる自分が要件を満たすか(獣医師・愛玩動物看護師の免許、又は実務経験と学校・試験)を確認する
- 登録の申請事業所の所在地の都道府県(政令指定都市)の窓口に相談し、申請書を出す。訪問するスタッフがいれば、その氏名と要件も確認する
- 保険の加入賠償責任保険の内容(預かった動物の死傷・脱走・鍵の紛失・家財の損傷)を確認して加入する。規約の上限はこの内容に合わせて決める
- 書類をそろえる利用規約、申込書、カルテ、同意書、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシー、鍵の預り証
- 標識・識別章・広告の表示事業所に標識を掲げ、訪問時の識別章を用意し、ホームページに登録の内容を載せる
- 受付の開始最初の依頼で、事前打合せから申込み、鍵の受渡しまでの流れを一通り確かめる
事業の形で、必要な書類が変わる
ペットシッターと一口に言っても、提供するサービスの組合せはさまざまです。宣伝に「お泊り可」「小動物可」「多頭可」と書くなら、その数だけ規約に特則が必要になります。事業の形と、必要になる書類・条項の関係は次のとおりです。
| サービス | 規約・書類で手当てすること | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 訪問による世話(給餌・トイレ・遊び) | 作業の範囲、行わないこと、提供時間、早く終わった場合 | 利用規約 |
| 散歩代行 | 首輪・リードの事前確認、鑑札と迷子札、悪天候、同時に連れ出す頭数 | 利用規約 |
| お泊り(宿泊を伴う世話) | 使ってよい設備、水道光熱費、第三者の立入り、外出、スタッフの安全 | 利用規約 |
| 鍵を預かる | 受渡しの方法、保管、紛失時の費用、返却 | 鍵と留守宅 |
| 投薬を受ける | 獣医師の指示に基づく範囲、方法の確認、侵襲を伴う行為の禁止 | 事故・病気・死亡 |
| 自分の施設で預かる | 預かり・返還・お迎えの遅れ、他の犬との接触、施設の基準 | ペットホテル |
| スタッフに任せる | 業務委託か雇用か、登録との関係、鍵と個人情報 | スタッフとの契約 |
副業・個人事業主で始める場合の注意
副業として始める場合でも、報酬を受けて繰り返し他人の動物を世話するなら、登録の手続は本業の事業者と同じです。週末だけ、知人の紹介だけ、という始め方でも、登録の前に受けることはできません。
個人事業主として始める場合は、規約や申込書の事業者の欄に、屋号だけでなく、契約の当事者である個人の氏名を書きます。屋号は権利義務の主体ではないので、屋号だけを書いた書類では、事故のときに「誰と契約したのか」が争いの入口になります。あわせて、登録の事業所の所在地、登録番号、有効期間、動物取扱責任者の氏名を、規約・申込書・特定商取引法に基づく表記・ホームページで同じ表記にそろえます。
保険は、規約より先に決める
ペットシッターの保険は、加入している団体や商品によって、対象になる事故と対象外の事故が大きく違います。事務所がレビューした規約では、加入していた保険の対象外の事故として、次のようなものがありました。
- 預かった動物の脱走・逃走に起因する事故
- 預かった動物の病気に起因する事故
- 犬・猫以外の動物(小鳥・うさぎ・フェレットなど)
- 預かった動物同士のけんか
- 預かった鍵などの受託物の紛失
脱走はペットシッターで最も典型的な事故なのに、保険が出ないことがあります。そのうえ規約に「一切責任を負わない」と書いていても、その条項は無効になる可能性が高い。保険も免責も効かず、法的な責任だけが残る領域が生まれます。規約を作る前に、保険証券(チラシではなく、現に有効な証券)を手元に置き、対象外の事故を一つずつ確認することが、開業の準備の要です(賠償と保険)。
申込みの流れを先に決める
ペットシッターの申込みは、①問合せと事前打合せ(カウンセリング)の依頼、②飼い主の家での事前打合せとカルテの作成・鍵の受取り、③申込書への署名、という三段階になることが多くあります。どの時点で契約が成立するか、どの書類が契約の内容を決めるかを決めておかないと、「打合せで言った」「聞いていない」の争いになります。飼い主の家でその場で申込書に署名してもらう場合は、特定商取引法の訪問販売との関係も整理が必要です(料金・キャンセルと特商法)。
ご相談の場面から:開業前のご相談
まず規約だけ作っておき、登録は依頼が来てから申請しようと考えています。
順番が逆です。登録を受けずに業として始めると無登録営業になり、罰金の対象になります。登録の申請には、動物取扱責任者の要件の確認や、訪問するスタッフの確認が必要なので、規約の準備と並行して、早めに窓口に相談しておくことをお勧めします。
ペットシッターと家事代行を一緒に提供したいと考えています。
家事代行の付随としてペットの世話をする場合でも、その部分が第一種動物取扱業(保管)に当たる可能性があります。登録の要否を窓口で確認したうえで、規約もサービスごとに範囲と責任を書き分けます。
本店と登録した事業所が違うときの書き方
法人で始める事業者には、登記上の本店と、第一種動物取扱業の登録をした事業所(実際の拠点)が別の場所にある、という例があります。事務所が手がけた規約では、依頼者から「両者が混同されないように、それぞれ正しく書き分けてほしい」とのご要望をいただきました。
事務所の改訂例:事業者の表示
表示の構成
ポイントサービス名は権利義務の主体ではありません。定義の条でも「当社」(法人)、「本サービス名」(名称にすぎないもの)、「事業所」(登録に係る事業所)を分けました。事故のときに「誰を相手に請求するか」の入口で争いにならないよう、申込書の当事者の欄も「法人名(サービス名)」の併記にしています。
二つの表に分けると、事業所を移転した、動物取扱責任者が交代した、という変更のときに、どちらの表を直せばよいかもはっきりします。登録事項の変更の届出と同じ日に、規約・申込書・特定商取引法に基づく表記・プライバシーポリシーの第2表を差し替える、という手順を社内で決めておくと、書類の一部だけが古いまま残ることを防げます。
ご相談の場面から:受ける動物の範囲のご相談
うさぎやハムスター、小鳥も受けたいのですが、加入している保険が犬・猫に限られていました。
選べる道は三つです。①小動物を対象にできる特約があるかを保険会社に確認する、②小動物を受託の対象から外す、③保険がないことを前提に賠償の上限を設計し、そのことを飼い主に説明して受ける。いずれも経営の判断ですが、最も避けたいのは、ホームページや規約に「小動物可」と書いたまま、保険の対象外の状態にしておくことです。
カメやトカゲの世話の依頼もあります。登録の内容は変わりますか?
爬虫類も第一種動物取扱業の対象の動物です。登録の申請事項の「主として取り扱う動物の種類と数」に含めているかを確認し、含めていなければ変更の手続を窓口に確認します。温度や湿度の管理など、犬・猫と違う世話の内容は、カルテの記録事項にも加えておきます。
事業が大きくなったときに見直すこと
一人で始めたペットシッターも、スタッフを迎え、預かりを始め、法人にする、と形が変わっていきます。そのたびに、登録の手続と書類の両方に見直しが必要になります。
| 変化 | 登録の手続 | 書類の見直し |
|---|---|---|
| スタッフに訪問を任せる | 訪問する職員の氏名と要件の確認、変更の届出 | 識別章の用意、スタッフとの契約、規約の代行者・スタッフの条 |
| 従業員を雇う | 訪問する職員として届け出る | 業務委託のスタッフがいれば、フリーランス法の義務の範囲が広がる(特定業務委託事業者) |
| 自宅や店舗で預かりを始める | 飼養施設を設ける事前の届出 | 預かり・お迎え・返還の特則(寄託の性質) |
| 事業所を増やす | 事業所ごとの登録と動物取扱責任者 | 規約の事業所の表示(第2表) |
| 個人から法人にする | 登録を受ける者が変わるため、法人としての登録の手続を窓口に確認 | 契約の当事者の表示、既存の利用者への切替えの案内 |
どの変化でも共通するのは、登録の内容と書類の表示を同じ日にそろえることです。登録の手続だけ済ませて規約が古いまま、あるいは規約だけ直して届出を忘れている、という状態が、トラブルのときに事業者の説明を難しくします。
よくあるご質問
ペットシッターを開業するには何が必要ですか?
第一種動物取扱業(保管)の登録と、事業所ごとの動物取扱責任者の選任が必要です。そのうえで、利用規約・申込書・カルテ・同意書・特定商取引法に基づく表記・プライバシーポリシー・鍵の預り証をそろえ、賠償責任保険に加入します。
副業で週末だけ受ける場合も、登録は必要ですか?
報酬を受けて繰り返し他人の動物を世話するなら、週末だけでも業として行うことになり、登録の対象になり得ます。登録の前に始めると無登録営業になります。
個人事業主の屋号だけで契約してもよいですか?
屋号は権利義務の主体ではないので、規約や申込書には契約の当事者である個人の氏名も書きます。登録番号や事業所の所在地も、すべての書類で同じ表記にそろえます。
保険は何を確認すればよいですか?
預かった動物の死傷、脱走、病気に起因する事故、犬猫以外の動物、動物同士のけんか、鍵の紛失、家財の損傷、飼い主や第三者のけがのそれぞれが、補償の対象かどうかを、現に有効な保険証券で確認します。
ペットシッターに特定継続的役務提供の規制はかかりますか?
かかりません。特定継続的役務提供は政令で指定された7業種に限られ、ペットシッターは含まれません。ただし、Webサイトで申込みを受けるなら通信販売の表示、利用者の家で契約するなら訪問販売の規律との関係を確認します。
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本ページは一般的な情報提供です。登録の手続や基準の運用は、事業所の所在地の都道府県・指定都市によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたペットシッター・ペットのお世話サービスの利用規約、申込書、同意書、スタッフとの業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 環境省 動物の愛護と適切な管理 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド